Column No31 『未来のために』

ペーパーレスが叫ばれ、我々の職場からも紙媒体が年々減って来ている。新聞を取っている人もどんどん減っており、日本新聞協会によると新聞発行部数は20年前に比べ3割以上も減っているのである。

私が住む北海道釧路市の主要産業は漁業、製紙、石炭なのだが、そのどれもが元気が無く街も衰退の一途である。昨年秋に2つある製紙工場のうち1つが今年8月を以て製紙事業から撤退するとのニュースが流れた。私がこの街に移り住んで10年余り、全国の1割を占める新聞用紙生産が主力であるこの工場は、この間人員削減や抄紙機の一部稼働停止などリストラを進めていた。私の職場にも従業員の家族が多数おり、心苦しいのではあるがいつまで持つのかなぁと何となく思っていた。

昔、この工場は地元の就職受け皿として、最盛期で従業員が約1,300人おり、市の主要企業として市議会議員も輩出していたと聞く。現在は従業員が約250人であるが、関連会社や協力会社を含めるとこの工場では約600人が働いている。家族を含めると約2,000人、多くの人は転勤または転職を迫られており、住み慣れた釧路を離れるか、他業種に転職するかの決断をしなくてはならない。

撤退が報道されて市が動き始めたのだが、本社への度重なる陳情と署名集め程度しか手が無く、到底そんなことでは翻意する訳が無かったのである。身の廻りから紙媒体が減り、ペーパーレスを叫びまくっている中、製紙工場に雇用確保の為に継続して欲しいというのはどう考えても無理筋である。因みに需要のあるトイレットペーパーやキッチンペーパーなどの生活用紙生産への転換をするにしても大消費地から遠く離れたこの地では輸送費が掛かるだけとのことである。

これを臨床工学技士にあてはめてみると、臨床工学技士の約8割が透析業務に従事している。もし、透析業務が無くなったら、現役想定4万人の臨床工学技士のうち3万人以上の雇用の場が失われる。色々大人の事情があるのでそんなに極端なことは無いとは思うが、移植や再生医療の発達、在宅シフトが進んで行くと雇用の場は確実に減るのである。そう考えると、透析業務が今のままの姿でいつまで続くのかなぁと何となく思っている。こうなってしまってから動くのでは遅いのである。国への陳情と署名では何ともなるまい。言うまでも無く雇用確保の為に今のままの透析医療を継続して欲しいというのは無理筋であり、患者を敵に回すことになる。

かなり遠回りしたが、そこで連盟の話しである。日本臨床工学技士連盟の基本理念は“CEの未来を創る。すべての人の未来を創る”である。現状維持ではなく、その先を見据えて臨床工学技士がどう生き残って行くか、更に力をつけて如何に雇用の場を確保し続けて行くかという未来である。

この未来を実現する為に、臨床工学技士だけでどうにかしようとして来たのが連盟創設前である。技士会が正攻法で陳情するだけではどうにもならず、診療報酬獲得や業務拡大、更には地位向上の為には政治の力が必要だと気付かされ、我らが肥田理事長が政治団体として当連盟を創設したのが2013年のことである。まだまだ歴史が浅くもっともっと力が必要である。

政治団体というと目を背ける人が多いのも、昨今の情勢から気持ちはわからないでもない。ただ、ここは皆さん、我々の未来の為に大人になって当連盟に力を貸して頂きたい。我々を応援して頂ける自見はなこ参議院議員はじめ政治家諸先生がいる限り、陳情と署名ではどうにもならなくても、我々が票で応援することが出来たなら何とかなるのかも知れない。

北海道・東北ブロック理事 倉重諭史

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