Column No.55 『 ギルド -Guild- 』

皆さんは、ギルドという言葉は耳にしたことはありますか?中世の世界観を模した物語には度々、冒険者ギルドや商人ギルドのような名前で登場する組織として耳にしたり目にしたりしたことがあると思います。
ですが、ギルドは決して物語の中だけの組織というわけではなく実在する組織でした。その起源は中世から近世にかけての西欧諸都市(特にドイツ)であり、商工業者によって結成された各種職業別の組合を指します。いち早く成立したのは、大商人達によって組織された商人ギルドであり、彼らの存在は都市の成立から発展に大きく寄与することとなります。しかし、その反面で市政運営を独占していたことが反発を生むことになります。市政運営を独占され、自分たちの権利がそこなわれていた手工業者たちは商人ギルドに対抗して手工業ギルドを結成することになります。ギルドに対抗してギルドを立ち上げたことにより対等に市政参加を要求する力を得ることになったのです。

この両集団の闘争はツンフト(※)闘争とも称され、闘争を通じて手工業者にも市政参加の道が開かれることになりました。
※「ツンフト(Zunft)」はドイツ語で手工業ギルドを意味します。

 このように、ギルドは自分たちの立場を守るため、あるいは自分たちの利権を確立するために組織されたわけですが、近世においては情勢に併せて少し立ち位置を変えていきます。近世西欧諸国では絶対王政が敷かれ、各都市の自主性が失われ王権に屈していくことになります。その中で、ギルドは時の王権に接近して自らの利権擁護を図ることになりました。時代が下り、徐々に市民階級が成長することで閉鎖的・特権的なギルドへの批判が強まり、市民革命の中でギルドは解体を余儀なくされるという運命をたどりました。しかし、遅くまで封建制が残っていたドイツではギルドまたは、それらの行動様式が残っていたため、ギルドを源流とする各産業の伝統的な共済組合を母体として職業別の社会保障制度が作られました。この制度自体は21世紀まで生き残ることになります。我が国、日本におけるギルドは鎌倉時代~室町時代に作られた「座」と呼ばれる商工業者の団体で、公家や寺社の保護を受けて営業を独占する権利が認められていたといわれています。

 話は戻りますが、絶対王政とともに解体されたギルドは、現在における職能団体の起源ともいわれており、その本質は同業者同士が集まり自分たちの立場を守り、利権を得るために組織された集団であり、個人では届かない声を社会に届け、個人では負けてしまうような大きな相手と対等に闘うために必要不可欠な「チカラ」であったということが理解できると思います。 
では、私たちの同業者組織である臨床工学技士ギルドはどうでしょうか?
臨床工学技士会や臨床工学技士連盟という組織はどんな役割を担っているのか、何のために会に所属しているのか、考えたことはありますか?職能団体(ギルド)としての役割を当てはめて考えてみると、臨床工学技士の職業としての権利を確立し、社会的立場を守るために力を合わせる組織であり、王権に接近して自らの利権擁護を図ることに相当するのは、政治に対して団体として団結して声を上げていくことに他なりません。

 技士会や連盟に所属しない理由として、会費が高い、必要性が感じられない、メリットがない、などがありますが、必要性がないとはどういうことなのでしょうか?現在の職業の待遇に満足しており、給料のベースアップの必要もないという意味になるのですが、本当に職能団体(ギルド)の必要性というものを理解していたら出てこない言葉だと思います。権利を確立するということは一朝一夕で成せることではありません。それでも、コロナ禍等やタスクシフト・シェアなどのタイミングによって数段飛ばしで臨床工学技士の立ち位置は大きく変わったと感じることもありますが、それは職能団体(ギルド)が政治を動かす現場にいる人達に、私たちはこんなことが出来る職業ですというアピールを続けていたからこそ好機を活かし切ることが出来たのです。

 すべての臨床工学技士の皆さんが会に所属することで臨床工学技士ギルドは大きな相手と対等に闘う「チカラ」を得ることになります。具体的には政治を動かし、臨床工学技士に診療報酬が割り振られる、すると病院における臨床工学技士の立場は高いものとなり、求人はもとより給料も増加することになります。これほど分かりやすいメリットはないでしょう。会員も非会員も一度は、「ギルド」に所属するということの本当の意味を考えてみても良いと思います。そして、全員が臨床工学技士ギルドに所属して、他の医療系ギルドとも対等な立場で権利を分け合える。そんな未来を目指しませんか?

事務局長 宮本直

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