Column No30 武士は食わねど高楊枝

ご存知の方も多いと思いますが、第204回国会で、「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」が成立しました。これにより、私たち臨床工学技士の業務は拡大することとなりました。個々の内容については、賛否両論あることと思いますが、いずれにせよ臨床工学技士の職域の拡大と存在意義を高めることにつながることは言うまでもありません。しかし、この背景に「臨床工学技士を支援する議員連盟」がおおきく関与していることを知っている人は少ないのではないでしょうか。

ところで、皆さんは「武士は食わねど高楊枝(たかようじ)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。聞いたことがなくても私たち日本人の中には、ある種の美徳として備わっています。私は福岡県の旧家で育ちましたが、幼いころはいつも父や兄から「男の子やったら、それくらいのこと我慢せんかっ!」といつも聞かされていました。

「武士は食わねど高楊枝」とは、たとえ食べ物が食べれないほど困窮していても、ぐっとこらえて涼しい顔をしておくものだ」という事です。武士の価値観をよく表している言葉ですが、我々日本人の中には現在も脈々と受け継がれています。これは、逆に考えると、「たとえ困っていても、それを声に出すことは情けないこと」であると捉えることができ、不満があっても騒ぎ立てずに、そのときやるべきことを黙々とやる・・・・・。これは品格を重んじる日本人の良いところであり、国民性が高いといわれる所以にもなっています。

他方、肝心な所でもその感性を発揮してしまい、自己主張が下手なことは否めません。特に国際社会でも日本という国は、はっきりとした主張や明言をしない事が多く「相手が理解してくれている」頼みのところが多いのではないでしょうか。現に、自己主張が強い人をみたときに私達が最初に抱く感情は、「よし!議論しよう!」という姿勢ではなく、「なんだ、こんな場で騒ぎ立てて」と思う人が大多数なのではないでしょうか。

さて、医療現場ではどうでしょうか。医師や看護師、薬剤師など様々な職種が、その職域を巡って議論がおこなれてきました。実に細かいレベルでの話し合いがおこなわれているのです。最近の例を挙げるならば、看護師の特定行為でしょう。皆さんも一度は耳にされたことがあると思います。ある基準を満たせば、従来医師がおこなっていた医療行為を看護師がおこなうことができるというものです。詳しい説明は割愛しますが、この中には、人工呼吸器、心臓ペースメーカ、IABP、PCPSの操作などが盛り込まれています。私たち臨床工学技士はこれらの装置の専門家たる自負があるでしょうが、それは勝手に臨床工学技士が思っているだけといっても過言ではないのです。「臨床工学技士は医療機器、生命維持管理装置の専門家であるから操作は任せます」といった認識は、他の職種には通用しないのです。

では、このような医療現場の職域に関する話し合いはどこでおこなわれているかという事ですが、これは厚生労働省が関係者をメンバーに加えて議論を進めていきます。厚生労働省は国会審議の場で、国会議員や議員連盟からの指摘や進言によって議論を始めるので、国会議員を擁立していない職種では、話し合いのテーブルにさえ乗らないままで議論が進む可能性があるわけです。

このように医療職種と政治は密接な関係にあり、現場の声を国会に届けるには、当然、国会議員が必要になります。国会議員は自分達を応援してくれる団体の意向を政治の場で代弁し、議論をしてくれます。自分達を応援してくれる団体こそ、各職種にある連盟組織という事になります。そこで私たち日本臨床工学技士連盟の存在が必要になるわけです。

「臨床工学技士は食わねど高楊枝」をしていては、当然、政治の場に声は届かないのです。医師や看護師が自分達の待遇や仕事内容を何とかしてくれるだろうとの考えでは、いつまでたっても、「給与は据え置き」、「他の職種がやっても構わない業務ばかり」「臨床工学技士が病院に居たって居なくても構わない」という事態になるのではないでしょうか。

私たち一人ひとりは声を上げるのが不得意(高楊枝)だったとしても、代表者が居て代弁をしてくれる国会議員が居れば、少なくとも話し合いのテーブルにつくことができるわけです。皆様に一人でも多く会員になっていただくことが、私たち臨床工学技士の存在意義を高める一歩になることを読者の皆さんにはご理解いただきお声かけをお願いしたいと思う次第です。

 

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