Column No41 『君はヒノマルソウルを持っていますか?』

選対部長 長尾尋智

2022年冬のオリンピック北京大会が閉幕した。この大会を観戦しながら大いに色々なことを感じた。この大会では、気象条件等が厳しく、メダル候補の選手たちがアクシデントに見舞われ脱落する場面が目立った。わが日本の選手たちも苦戦を強いられ苦しんだ。好不調の波に耐え、それぞれが挑んだもののオリンピックに宿る魔物には皆が勝利することはできなかった。しかし、何度となく涙があふれた大会であったことは間違いない。

高梨沙羅は、突然足もとをすくわれ泣き崩れ立ち上がれなかった。空を飛ぶ翼は魔物に溶かされ歩くこともできない。まだ若い彼女であったが、それでも10年を超えるベテラン。オリンピックに懸けた貴重な魂と時間が、もろくも砕けた瞬間が見て取れた。しかし、チームが一丸となって支え、彼女を前に向けさせた。最後のジャンプを終えると、次の試合に向けて沙羅は旅立った。きっと彼女は新しい翼を鍛え上げてまた美しく空を舞ってくれると思う。

今回の羽生結弦は、入念な計画を立てきっちり合わせてきたに違いない。4年前の王者らしく奢らず、怒らず、焦らず。彼を見ていると侍を感じる。一見スレンダーな体型であるが、中身は鍛え上げられた日本刀。瞬時に4回転する姿は圧巻の美しさを持ち、氷に刃文のように優美な線を描く。鍛えた精神力、耐えた肉体はピンピンに張っていた。飛べなかった瞬間、振り向きざまにリンクを確認したが、その時、糸が切れたように見えた。誰も攻めることなく言葉を選んで幾度となく天を見ながら気丈に話す姿や、リンクの上で「ありがとうございました。」と敬意を示す彼を見て、限りなく誇らしく思った。

1998年冬季オリンピック長野大会。最後の種目、団体男子スキージャンプ。日本チームは大きな重圧に耐えるしかない状況であった。天候の悪化は競技の終了さえ予感させた。その時、23人のテストジャンパーが支えた。「大丈夫、飛べますから続けましょう。私たちが飛べることを証明します。」誰のためでもない未来のために、魔物への無謀とも思えるこの挑戦状に命を懸けた姿は、日本に歓喜をもたらす結果に繋がった。

スピードスケート、パシュートは一糸乱れぬ隊列を武器とする。陸上の400m男子リレーのバトンリレーもしかりである。この「ヒノマルソウル」は他のすべての選手やスタッフに引き継がれる、「一丸となって戦う姿」ではないだろうか。

2021年5月28日、「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進する ための医療法等の一部を改正する法律」が成立し、公布された。これによって臨床工学技士は新しい展開に進んでいかなければならない。「法案の成立」が天から勝手に降ってきたものではないことを真剣に受け止めたい。この法案の成立までに、政治に住む魔物に粘り強く立ち向かい、切り開いてくれた「女神」のことを絶対に忘れてはならないのです。そして、この未来のために尽くしてくれた女神はまだ戦っているのです。その戦いは紛れもなく日本の医療の未来のためであり、臨床工学技士の未来のためでもあるのです。戦い方がうまくない我われである。しかし、何としても勝たなければない状況がある。

女神がほほ笑み、また新たな戦いに向かうため、「ヒノマルソウル」を胸に一丸となって戦い続けたいと思う。

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