腎不全の患者さんが選択可能な腎代替療法の1つに、在宅血液透析(Home Hemodialysis、 以下、HHD)があります。HHDはご自宅で患者さん自身が透析をする方法です。2021年末の統計調査によると、約32万人いる透析患者さんのうち0.2%の方、748人の患者さんがHHDを行っています。CEの中でもHHD業務に携わっている人口は少ないと思いますので、簡単にご紹介させていただきます。
HHDにはいくつかのメリットがありますが、その中でも長時間頻回透析をご自身の生活スタイルに合わせて行うことができるのが大きな特徴です。長時間頻回透析は生命予後に良いとされており、十分な透析効果が得られることで食事制限も緩和されます。
また通院に合わせて予定を組むのではなく、ご自身の予定に合わせて治療を行うことができ、趣味や仕事の時間を確保しやすくなります。私が関わった中には、ご自宅でお子様と過ごす時間が増えた、配偶者による送迎がなくなり家族の負担が減ったというケースがありました。
その一方でデメリットもあります。HHDにはCAPDのような専用の機器がありません。そのため数か月間の訓練による技術習得が必要であり、導入後も準備や片付けに時間がかかってしまいます。その他にも水道料金や電気料金の自己負担、介助者・家族にかかる負担などが問題点として挙げられます。慣れるまで大変だったという声を聴くこともありました。
そして上記のようなメリット・デメリットの他に、HHD導入には大きな壁が2つあります。介助者がいることと、自己穿刺をすることです。透析中、血圧が下がり気分不快や意識を消失する恐れがあります。これは施設透析でもHHDでも起こりうることで、施設ではスタッフが見守っていますが、HHDではその役目を介助者の方にお願いする必要があります。HHD施行中、介助者はHHD患者さんが助けを求めた際、その声や警報が聞こえる範囲に常にいなければなりません。ほとんどの場合、この役目は同居の家族の方が担うため、未婚や親元を離れている患者さんはHHD導入に繫がりません。
自己穿刺が必要というのも難点で、透析歴何十年という方でも針は見たくない!とおっしゃって目を背ける方がいらっしゃいます。また血管が思うように育たず細い場合や血管の位置が深い場合から自己穿刺の難易度が高く、導入に至らないこともありました。
病院側にとってもHHD導入のハードルは高くなっています。施設でHHDを行うための整備作りで負担が大きく、費用対効果も優れていません。数か月置きにHHD患者さんのご自宅へ伺う必要がありますが、その間、スタッフが施設を離れても問題のないよう勤務を調整しなければなりません。そのスタッフも患者さんのご自宅という周りに頼れない環境でメンテナンスができ、病院車を運転できるスタッフでなければなりません。私自身、細い路地や人通りの多い踏切、限られたスペースへの駐車など、毎回ドキドキしながら運転しております。
いつかHHDにもCAPDのような専用の機械ができたり、CEの訪問や遠隔モニタリングで加算が取れたり、患者さんにとってもスタッフにとっても手を伸ばしやすい選択肢になってくれることを切に願っております。願っているだけですと特に変わらないので、今回ご紹介したHHDに限らず、CEの思いが反映された社会の実現に向け、国、政治に訴えかけるためにも今後も連盟活動に励む所存です。
関東ブロック・理事補佐 山田遥香