臨床工学技士(CE)としてのキャリアを歩み始めて10年目になります。今でも日々の業務に追われる中で、ふと「自分はこのままでいいのか?」という漠然な不安を感じることがあります。現場では即戦力として求められる一方で、医療の技術や知識が日々進歩しており、自分のキャリアの方向性に悩む若手CEは少なくないのではないでしょうか。
私自身もそうでした。4年目で新生児集中治療室(NICU)を任された時、私には戦う武器はありませんでした。新生児医療について、右も左もわかっていないCEが、発言をしても信じてもらえるはずがありませんでした。しかし、日々「赤ちゃんとご家族のために」という思いでNICUに足を運び、家族やNICUスタッフと積極的に関わり、真摯に業務に取り組んでいると、当時の新生児科部長に、「よく勉強している。間違ったことは言っていない。」と言ってもらえました。それ以降、医師や看護師から相談される機会が増え、多くのことを経験し学ぶことができました。それ以来、私は「人と人との関わり」を意識して働いています。
キャリアを考えるうえで、私が大切にしているのは「小さな専門性を持つこと」です。すぐに“何でもできるCE”にはなれなくても、人工心肺、血液浄化、呼吸療法など、何か一つの分野に興味を持ち、専門や認定資格を取得したり、勉強会や学会に参加したり、先輩や医師に質問したりすることで、自分の得意領域を築くことができます。そしてその専門性が、他のスタッフからの信頼やチーム医療の中での自信に繋がっていくと思います。
また、成長には「アウトプット」は必要不可欠です。私は学んだことや経験したことを院内の勉強会や学会などで共有するようにしています。誰かに伝えることで自分の理解が深まり、同じ志を持つ仲間との出会いに繋がりました。
CEのキャリアパスは一つではありません。管理職、教育、研究、企業など、多様な道が開かれています。今の業務の先に、自分がどうなりたいのかを考えることが、日々の成長の原動力になります。
CEの可能性は広がっています。医療職種の中でも後から誕生した資格であるため、柔軟に対応する事が他の職種と比べても優れていると思います。告示研修で職域を広げ多くの方が「シン・臨床工学技士」になった先には更なる業務拡大が開けてきます。だからこそ、若手である今、目の前の仕事に全力を注ぎつつ、小さな「好き」や「得意」を積み重ね、自分なりの道を切り開いていきたいと思います。また、一人では無理でも、みんなならできる。政治的側面から臨床工学技士の未来のために活動してくれている連盟のために「若手でもできること」つまり、自分の仕事環境を良くすること、臨床工学技士というライセンスを向上させることを考え、一人ひとりが自覚をもって行動すれば、この先10年、20年とある“CE人生の未来”を切り開くことに繋がると信じています。
千関東ブロック理事補佐 森田将基