Column No11「働き方改革が本当に目指すもの」

●タスクシフトが大詰め
タスクシフトの源泉となる働き方改革関連法案は、令和元年である今年の4月からすでに大企業では適応されている法律ですが、中小企業と医師などの特殊な技術を持つ職業には5年間の猶予期間が与えられているため、病院などの医療機関の適応は2024年からとなります。厚労省は医師の労務負担軽減に関するタスクシフトについて、来年の通常国会への提出を目指しており、急ピッチで作業が進められており、技士会もその対応に日々追われている現状です

●働き方改革のポイント

この法律で注視すべきポイントは、以下の通りです。
・年次有給休暇5日/年取得(消化)の義務化(罰則・罰金)
・時間外労働の罰則付き上限規制(罰則・罰金)
・60時間/月超の割増賃金率の引上げ(罰則・罰金)
・勤務間インターバルの確保(努力義務)
・同一労働同一賃金(努力義務)

なんと罰則・罰金まで設けられた厳しい設定となっています。一見、仕事を減らして休みを増やそう!という見方もできなくはありませんが、一方でもっともっと働いてしっかり稼ぎたいって人も居るかもしれません。そういう意味では一律に労働時間を削減することを、疑問に感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

●働き方改革の背景

一般的に過重労働の軽減で身体的な負担を軽くすることが目的と思われていますが、それだけではありません。なかなか表に出にくいのですが、実は人口減による国力の衰えを食い止める為です。一言で言ってしまえば少子高齢化がその原因で、単純に長時間労働の負担軽減が目的ではないのです。例えば、近い将来予想される問題として高齢者の家族を抱える世帯の介護問題があげられます。従前通りの勤務時間を遵守することが正社員の条件だとすると、介護との両立は困難となり、やむを得ず離職を迫られる事態が予想されます。これにより大量の現役世代が離職するようなことになると、国民総生産(GDP)のが低下することになり、国際競争力も低下してしまいます。さらに、税収の低下にも影響を及ぼし、社会保障の安定を揺るがすことにもなってしまいます。

●もうひとつ、外国人労働者受け入れの問題があります。勤勉で良く働く日本人は、ひと頃「24時間働けますか」と揶揄されるほど、働くことが偉いことと評価されてきました。私の認識が誤っていなければ「よく働くね~」は誉め言葉だと思います。一方外国人は、仕事に対して日本人ほど真摯かつ几帳面にとらえる傾向は薄いのではないでしょうか。入国管理法を改正して外国人を受け入れやすくしているのに、当の外国人が日本の働き方になじめず、思ったほど増えていないのだそうです。ここでも元を正せば人口減。女性や高齢者に加え、労働力を外国人にも頼らざるを得ない事情があるのです。

●幸いなことに通信インフラ(IoT)や人工知能(AI)が、同じタイミングで目を見張る台頭を見せています。昨今AIに仕事が奪われると話題になっていますが、少子高齢化による生産年齢人口の減少による労働力不足をこれらのテクノロジーが補う形となって、懸念される国力の低下を補う可能性が出てきました。物資が溢れ利便性が極限まで実現されるつつある時代となり、もうお腹いっぱい!と感じる場面もありますが、おそらくこの流れは止めることができないし、乗り遅れると取り残されることになるのだと思います。

●サボるという概念を変革する

自身の職場でも数年前から連続休暇制度が始まりました。複数の職員がいる中で、真っ先に長期休暇制度の使ったのは入職したての一番若い職員でした。先輩や上司は目が点になりましたが、この先輩や上司の感覚自体がひょっとしたら誤りなのかもしれません。そう言えば、皆勤賞なんて言葉もありましたね。若いころひたすら上司や先輩に従順で、年を取り逆の立場になったら、今度は部下にきめ細やかに気を遣う。幸せだなぁー。Mだから…(泣)

 

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