私は現在62歳。透析医療に携わって42年、透析バカを自負しております。臨床工学技士法は成立から34年、発足当時に思い描いた「立派な資格」は実現できているのだろうか?を自分なりに振り返ってみたいと思う。
私と医療への関わりをたどります。19歳のある日、動悸があり病院で検査をすると毎分40回程度の徐脈でした。医師からは原因が分からないが検査のため入院するようにと。そして、1か月の入院の間に検査技師や看護師、先生からいろいろな話を聞き、ペースメーカや心電図、内服治療について資料をいただき勉強もした。そして、「どうしたら病院で働けるのだろう」と友人に相談したところ「透析技士」という言葉と出会いました。本で調べても答えは見つかりませんでした。そこで、増子病院に問い合わせをしたところ、現在は無資格であるが、新しい職種で今後は国家資格になる可能性があると教えられ、「透析技士」の見習いとして就職することになりました。
その後、先輩方や多くの先生方による国への働きかけがおこなわれ、1987年6月に臨床工学技士法が成立し、国家資格が誕生しまた。私も現任者救済措置を経て受験し、資格を取った時には、多くの仲間と喜び、また、多くの先輩、先生、関連団体に感謝し、この資格が大いに世の中の役に立てる立派なものとなるように強く決意したものでした。
先日、「WEBで自見はなこを囲む会」が動画配信されました。自見先生の熱い思い、現実の姿を語られたとき、涙が出るほど感銘を受けた。この話を若いスタッフはどう思うのか?率直に感想を聞くことにした。以下はそれぞれの感想である。
【T技士】
各職能団体や連盟が職種の社会的地位の確立向上のため、職域を拡大する活動を行い獲得していく中で、我々が取り残されないためには同じような働きかけが必要となる。臨床工学技士の特異性を見出し、職域を確立するための法規の改定等、国会への働きかけが必要となる。その働きかけの一端を担っている連盟の存在意義を理解することができた。看護職のように確立した職能を目指すためには、連盟の活動に対し私自身が思いを持って支持していかなければならない。ひとりでも多くの臨床工学技士が、自分達で何かしなければ誰もしてくれないということを自覚しなければならない。でなければ医療現場で必要性の低い医療職として、淘汰される危機感を持たなければならないと感じた。
【K技士】
臨床工学技士の職域を広げ、医療現場での必要度を上げるためには政治に働きかける必要があり、そのためには日本臨床工学技士連盟の活動が重要なことがよく分かりました。シャントエコーを臨床工学技士が行えるように働きかけるつもりだと仰っていたので、シャントに携わっている立場として嬉しく思いました。
【O技士】
臨床工学技士は、透析、人工呼吸器、人工心肺などの操作やメンテナンスを実施している。しかし、まだまだ知名度は低いと感じている。その為に業務拡大が必要であるが、臨床工学技士が議員連盟に参加することや、資質向上の為に勉強会などに参加してアピールすることが大事だと思いました。
【O技士】
現在、臨床工学技士が診療報酬を得られる事柄があまりに少なく、各病院に臨床工学技士が従事しているものの、臨床工学技士でなくては!という状況ではないのが現状だと思います。今までは自分のスキルアップや、目の前の仕事に真摯に取り組むことが大切だと頑張ってきましたが、自見先生のお話を聞き、臨床工学技士の地位向上のためには技士個人の頑張りだけでなく、もっと世間的、政治的な観点からの努力が必要不可欠なのだと言うことを強く思いました。また、臨床工学技士の地位向上のために素晴らしい先生方が尽力されており、その頑張りを一般の臨床工学技士が知らなさすぎる、関心が無さすぎると危機感を感じました。臨床工学技士のために動いて下さっている先生方の活動を私たちが後押しするのは当然です。今回コロナの関係でECMOや人工呼吸器がとりあげられ臨床工学技士の名前が上がる場面があり、それを追い風にしていけるよう、自分たちの将来のためにもひとりひとりが自覚を持って活動をしていく必要があると感じました。
【M技士】
新型コロナ感染症の影響で、ECMOや人工呼吸器が話題として取り上げられていましたが、それを取り扱う臨床工学技士の名が出てくることは少なかったと思います。それはまだ臨床工学技士の知名度が低いためであると考えます。臨床工学技士としての社会的地位の確立や業務拡大をしていくためには、政治に働きかけている連盟の活動を支援していくことが重要であると感じました。
【I技士】
臨床工学技士法が施行されてから約30年が過ぎ約23700余人もの臨床工学技士が資格を持ち医療に従事されています。他資格に比べ施行からの年月も若いこともあり社会的認知度もまだまだ低いと感じています。医療の現場においても、臨床工学技士のみで診療報酬を獲得できるものも少なく、他資格と比較して絶対的な独自性が低くすべての病院においては必然性に欠けるものとなっているのは事実だと思います。現在、私が従事している血液透析の現場においても、この臨床工学技士の資格でしかやれない業務というのは多くなく、看護師など他職種に置き換えられる可能性は大いにあります。それは、今、臨床工学技士という資格で働いている我々が将来、職を失う可能性があるという事であります。それを防ぐのは、その医療現場において我々一人一人がその病院にとって必要とされる技術力を備え、それに準じた診療報酬の獲得ができることであると思います。この診療報酬獲得は法律や政令を決める国会議員の力が必要となります。今回、我々臨床工学技士のために力になっていただける自見先生のお話しを聴くことができました。医師の立場で現場でのコメディカルの事をよく理解した上で臨床工学技士の立場向上、診療報酬獲得にご尽力していただいていると感じました。我々のような現場で働いている臨床工学技士が連盟に加入しあと押しするのは当然ですが、個々が勉強し技術を磨き、目の前の患者様にとって必要な人材であり続けることがもっとも重要な事だと改めて感じました。
【K技士】
職能団体として臨床工学技士連盟の活動を支援していくことが大切だと感じた。医師の働き方改革を進めるタスクシフティングでは現在の教育以外の知識と技術が必要となってくる。そのため臨床工学技士会や関係団体が実施する認定制度や研修の参加が必須となってくる。そのなかでしっかりした知識や技術を習得しなければ侵襲度の高い診療補助行為での安全性の担保ができない。今後、今まで以上に臨床工学技士としての使命感をもって職務にあたりたい。
【M技士】
看護師が今現在、社会的にしっかり確率しているのは、昔から国会や、政治に密接に関わっていたためだと思う。コロナ禍により総理大臣の発言などもあり、世間が臨床工学技士という職業を知った今こそ政府に働きかけ臨床工学技士の立場を確立させる為の時であると思います。今後は私たちの代わりに政府に働きかけている連盟の講義を聴講したりすることが大事であると思った。
【N技士】
臨床工学技士としての仕事内容を明確にし、拡大していくために、連盟の活動の理解を深めること。また支持していくことが重要であると感じた。臨床工学技士各個人が「何ができるか」を考えて行動を起こさなければならないと感じた。
彼らは3年から20年の経験もバラバラなスタッフである。認識も危ういところもある。しかし、この感想を信じて彼らに夢を託そうと思う。
中部ブロック 理事 長尾尋智